ステンレス鋼の溶接技術について

 

ステンレス鋼の溶接と接合は、その特性を理解し、適切な手法を選択することで、効果的に行うことができます。

今回は、ステンレス鋼の溶接と接合について、具体的な例を交えながら詳しく解説します。

 

ステンレス鋼の溶接方法について

 

ステンレス鋼の溶接は、軟鋼の溶接法を用いることが可能です。

しかし、ステンレス鋼は軟鋼と異なる冶金的特性を持つため、溶接施工に当たっては、これらの特性を理解することが重要です。

1 被覆アーク溶接

被覆アーク溶接は、ステンレス鋼の溶接に最も多く用いられる方法です。

この方法では、母材と被覆アーク溶接棒との間にアークを発生させ、溶接棒を溶融して溶接します。

電源としては交流、直流のいずれも使用可能ですが、低電流になるとアークが不安定になり、品質に影響を及ぼす可能性があります。

そのため、板厚が1.5mm以下の薄いステンレス鋼の溶接は、被覆アーク溶接では実用上困難です。

2 ティグ溶接

ティグ溶接は、電極としてタングステンを用い、アルゴンやヘリウムガスで空気から遮断しながら行う溶接法です。

ステンレス鋼は熱膨張係数が大きく、溶接部に歪みが生じやすいため、押え金と裏あて金を使用して溶接部位をしっかりと固定することが重要です。

これにより、溶接中の熱による歪みを最小限に抑えることができます。

また、溶接速度を速め、溶接温度をなるべく低く保つことで、歪みの発生を防ぎ、ステンレス鋼の熱膨張による問題を最小限に抑えることが可能です。

 

3 スポット溶接

スポット溶接は、二つの導電性の優れた電極の間に、数枚の金属を重ね合わせ、圧力を加えながら局所的に通電・発熱させて融接する溶接技術のことです。

スポット溶接は、薄板(3mm以下)の重ね継手に適していますが、ティグ溶接やシーム溶接をする場合の予備的な仮付けなどにも用いられます。

 

4 シーム溶接

シーム溶接は、スポット溶接を連続的に行い、水密性や気密性を持つ溶接法です。

そのため、液体や気体を入れるタンクや容器などの溶接に適しています。

シーム溶接の際には、溶接不良により、ピンホールと呼ばれる極小の穴が生じることが問題となることがあります。

そのため、溶接部の一方から軽油を筆で塗り、反対側に軽油がにじみ出るかどうかを検査する必要があります。

これにより、ピンホールの存在を確認することができ、必要ならば溶接の修正や再溶接を行うことができます。

ステンレス鋼の溶接性

 

ステンレス鋼の溶接性は、ステンレス鋼の種類により異なります。

ステンレス鋼の種類としては、主にクロム系ステンレスとクロム・ニッケル系ステンレス(オーステナイト系)があります。

 

1 クロム系ステンレス

クロム系ステンレスは、13クロム系(マルテンサイト系)と18クロム系(フェライト系)の二つに分けられます。

 

13クロム系の代表的な鋼種としてSUS 410が挙げられます。

SUS 410は焼入れ硬化性が大きく、溶接熱影響部が割れやすい特性があります。

 

18クロム系の代表的な鋼種としてSUS 430が挙げられます。

SUS 430は溶接熱影響部の硬化は少ないものの、結晶粒が粗大化し、常温での靭性が低下します。

2 クロム・ニッケル系ステンレス(オーステナイト系)

クロム・ニッケル系ステンレスは、13クロム系ステンレスのような溶接熱影響部の焼入れ硬化や18クロム系ステンレスのような低温脆化の現象を示さず、ステンレスの中では最も溶接性に優れています。

しかし、軟鋼の溶接性に比べると若干の問題点があります。例えば、軟鋼に比べて熱膨張係数が大きいため、溶接による変形や亀裂が生じやすいという問題があります。

そのため、溶接前の適切な設計や溶接時の工夫、溶接後の熱処理など様々な配慮が必要となります。

溶接後の熱処理

 

溶接後の熱処理は、溶接部のビードの除去とスケールの除去が主な作業となります。

ビードの除去方法は、溶接方法や製品の用途により異なりますが、一般的には小型グラインダーを用いて研磨します。

初めに荒研磨し、状況に応じて細かい研磨材を使用します。さらに、グラインディングの後にヤスリだけで研磨することもあります。

これも初めは荒研磨し、次に目の細かいヤスリを使用します。最後に、溶接ビードを除去した後にサンドペーパーで研磨します。

索材の表面仕上げがヘアライン仕上げの場合は、サンドペーパーをかけるだけで終了しますが、その他の仕上げの場合は、それぞれに適した回転バフで研磨します。

スケールの除去には、機械的方法(サンドブラスト、ショットブラスト、ホーニング、グラインダーなど)と化学処理(酸洗)があります。

これらの方法は、溶接後の表面から酸化皮膜やその他の不純物を効果的に除去し、溶接部の品質を向上させます。

 

 

こちらのサイトもご覧ください

〈意匠金属に関するサイト〉

 

〈採用情報に関するサイト〉