二相ステンレス鋼とは、SUS304に代表されるオーステナイト系ステンレスとSUS430に代表されるフェライト系ステンレスが1:1の割合で混合し、それぞれの長所を活かした二相混合ステンレス鋼です。
特徴は高強度であり、オーステナイト系ステンレスのSUS304と比較して約2倍の強度があります。また、優れた耐食性があり、NSSC2120でSUS304相当、NSSC2351でSUS316L相当となります。
希少資源であるニッケルの含有量が少ないことから価格の変動が少ないのも特徴です。
二相ステンレス鋼への表面研磨加工ですが、通常のステンレス鋼と同様に仕上げが可能であり、意匠性のある商品や、機能的に優れた部品などで活躍する金属です。
組成は、フェライト系ステンレス鋼とオーステナイト系ステンレス鋼の両方の特性を兼ね備えたステンレス鋼です。この材料は、その優れた強度と耐食性から、広範な産業用途で利用されています。
二相ステンレス鋼の特徴
- 高強度:
- フェライト系とオーステナイト系の両方の構造を持つため、非常に高い強度を誇ります。従来のステンレス鋼と比較して、引張強度や降伏強度が高く、重量を減らしても同じ強度を維持できます。
- 優れた耐食性:
- 塩水、塩化物環境、硫酸などの腐食性物質に対して優れた耐性を持ちます。特に、孔食や応力腐食割れに対して高い耐性を示します。
- 優れた溶接性:
- 他のステンレス鋼と比較して溶接性が良く、溶接後の機械的特性や耐食性が維持されます。
- 低い熱膨張率:
- 熱膨張率が低いため、温度変化に対して寸法安定性が高いです。これにより、高温環境でも優れた性能を発揮します。
二相ステンレス鋼の構造
二相ステンレス鋼は、その名の通り、フェライト(α)相とオーステナイト(γ)相の二つの相から構成されています。通常、フェライト相とオーステナイト相の比率は約50:50であり、このバランスにより、フェライト系の高強度とオーステナイト系の高耐食性が融合されています。
二相ステンレス鋼の種類
- Lean Duplex(リーンデュプレックス):
- モリブデンやニッケルの含有量が少ない二相ステンレス鋼。コストが低く、一般的な構造用途に適しています。
- Standard Duplex(標準デュプレックス):
- 二相ステンレス鋼の中で最も一般的なタイプで、標準的な化学組成を持ちます。海洋構造物、化学処理装置、パイプラインなどに広く使用されます。
- Super Duplex(スーパーデュプレックス):
- モリブデンやニッケルの含有量が高く、非常に高い強度と耐食性を持つタイプ。特に過酷な腐食環境や高圧環境に適しています。
二相ステンレス鋼の用途
- 海洋構造物:
- 塩水や塩分を含む環境での優れた耐食性から、オフショアプラットフォーム、船舶、波止場などに使用されます。
- 化学処理装置:
- 腐食性の高い薬品や溶剤に対して高い耐性を持つため、化学プラントや製油所の装置、タンク、配管に使用されます。
- 石油・ガス産業:
- 高圧・高温環境下での優れた性能から、石油・ガスの掘削機器、パイプライン、圧力容器に使用されます。
- パルプ・製紙産業:
- 腐食性の高い薬品を使用する環境での耐久性が求められるため、パルプ・製紙工場の装置や配管に使用されます。