耐腐食・防錆

金属の耐腐食および防錆は、金属製品の寿命を延ばし、性能を維持するために重要な要素です。これらのプロセスは、金属が環境中の酸素、水分、塩分、化学薬品などの影響を受けて腐食するのを防ぎます。

1. 金属の腐食のメカニズム

腐食は、金属が周囲の環境と化学反応を起こして劣化する現象です。典型的な腐食のメカニズムは以下の通りです。

  1. 酸化反応:
    • 金属が酸素と反応して酸化物を形成する。例えば、鉄が酸化して酸化鉄(錆)を生成する。

     

  2. 電気化学的反応:
    • 電解質(例えば水分)が存在する環境で、金属のアノード部位とカソード部位が形成され、電流が流れることで腐食が進行する。
    • アノード反応(鉄の酸化)
    • カソード反応(酸素の還元)

2. 耐腐食および防錆の方法

耐腐食および防錆の方法は、多くの技術や処理を組み合わせて実施されます。以下に主な方法を説明します。

1. 表面コーティング

  • 塗装:
    • 防錆塗料(エポキシ、ポリウレタン、亜鉛リッチプライマーなど)を金属表面に塗布し、酸素や水分の侵入を防ぐ。
  • パウダーコーティング:
    • 静電気を利用して粉体塗料を金属表面に付着させ、高温で焼き付けることで硬い保護膜を形成する。
  • アノダイジング(陽極酸化処理):
    • アルミニウムなどの金属に電解処理を施し、酸化被膜を形成する。耐腐食性と装飾性を向上させる。
  • クロムメッキ:
    • 金属表面にクロムを電気めっきして硬く耐腐食性の高い層を形成する。

2. 犠牲防食

  • 亜鉛めっき(ガルバナイジング):
    • 鉄鋼製品に亜鉛層をめっきすることで、亜鉛が犠牲陽極として作用し、鉄が腐食するのを防ぐ。亜鉛が先に酸化することで鉄の腐食を抑制。
  • 犠牲陽極の設置:
    • 海洋構造物や地下パイプラインにマグネシウムや亜鉛などの犠牲陽極を取り付け、主材を保護する。

3. 合金化

  • ステンレス鋼:
    • 鉄にクロム(通常は10%以上)やニッケル、モリブデンを加えることで耐腐食性を向上。クロムが酸化被膜を形成し、鉄の腐食を防ぐ。
  • 耐食性合金:
    • チタン、アルミニウム、銅などの金属に他の元素を加えて耐腐食性を向上させる。

4. 環境制御

  • 湿度管理:
    • 湿度を管理して水分の付着を防ぐ。除湿機やエアコンを使用して適切な環境を維持。
  • 化学処理:
    • 防錆剤や防食剤を使用して金属表面の腐食を防止。例えば、船舶のバラストタンクに防錆剤を添加。

3. 応用例

  • 建築:
    • 鉄骨構造、屋根、外壁に防錆塗料を使用し、長期間の耐久性を確保。
  • 自動車:
    • 車体に亜鉛めっきを施し、下回りには防錆塗料を塗布することで錆の発生を抑制。
  • 海洋構造物:
    • 船舶、オフショアプラットフォームに犠牲陽極や防錆塗料を使用し、塩害から保護。
  • 電子機器:
    • 金属ケースやコネクタに防錆コーティングを施し、耐久性を向上。

金属の耐腐食および防錆は、製品の寿命を延ばし、性能を維持するために不可欠な技術です。表面コーティング、犠牲防食、合金化、環境制御などの多様な方法を組み合わせて実施することで、金属の腐食を効果的に防ぐことができます。適切な防錆処理を行うことで、金属製品の信頼性と耐久性を大幅に向上させることが可能です。

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