TECHNICAL REPORT
露光装置・真空装置に求められる表面光沢の管理。ガラスビーズブラスト・サンドブラスト・グリッドブラストの3分類について、60°反射率を実測し、各ブラスト方法の特性と用途適合性を詳細に解説します。

ブラスト処理(ブラスト加工)とは、研磨材や研削材を高速で金属表面に投射することで、表面の粗さ・光沢・形状を制御する表面処理技術です。ステンレス鋼の場合、母材の耐食性を活かしつつ、用途に応じた表面特性を付与するための不可欠なプロセスとなっています。
特に精密機器・産業装置の分野では、単に「キレイに仕上げる」だけでなく、表面からの反射特性を精密にコントロールすることが求められます。露光装置においては迷光(ゴースト光)の抑制、真空装置においては内壁からの熱輻射や光散乱の管理が、装置性能に直結します。
本ページでは、TOYO-FMDSが実施したブラスト処理種別ごとの60°反射率計測データをもとに、各ブラスト方法の表面反射特性とその産業応用について詳細に解説します。
ブラスト処理の反射特性比較において、下地条件の統一は不可欠です。本試験では、すべてのサンプルに対して#400バフ研磨を施し、同一の初期表面状態からブラスト処理を行うことで、処理方法による差異を純粋に抽出しました。

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🔬 下地処理 全サンプル共通:#400バフ研磨で表面を統一。研磨目の方向・深さを揃え、ブラスト処理の差異のみを変数とした。 |
📐 計測角度 60°グロス(光沢計)で反射率を計測。JIS K5600等の標準計測角度で、中程度の光沢域を幅広くカバーする汎用角度。 |
📊 計測レンジ レンジ100・レンジ1000の2段階で計測。高光沢はレンジ100でオーバーレンジのためレンジ1000を使用。低光沢はその逆。 |
ブラスト処理は投射材の材質・形状・粒度によって表面粗さと光沢が大きく変化します。本試験では産業用途で広く使われる3カテゴリを対象としました。
🔵 ガラスビーズブラスト
球状ガラス粒子による均一なマット仕上げ
球形のガラスビーズを投射するブラスト方法。球状粒子が表面を均一に叩くため、規則性の高い均一なくぼみが形成されます。粒度(#メッシュ)の選択により、高光沢から半マットまで幅広い仕上げが可能な点が特徴です。
本試験では3品種を計測。粒度の順序はMAKO-16S(最細)< MAKO-1A(中)< MAKO-2H(最粗)となります。ただし反射特性は粒度だけで決まるものではなく、ベースとなる研磨加工の仕上げ状態・ブラスト照射距離・照射密度も複合的に影響します。
| MAKO-16S(最細粒) | 47.7 GU | |
| MAKO-2H(最粗粒) | 115 GU | |
| MAKO-1A(中粒) | 141 GU |
🟠 サンドブラスト(俗称)
鋭角研磨材による強力な光沢低下処理
「サンドブラスト」は業界で広く使われる俗称で、実際には砂(ケイ砂)ではなくアルミナ、炭化ケイ素などの鋭角形状の研磨粒子が使用されます。鋭角粒子が表面をスクラッチするため、表面に方向性のない複雑な凹凸が形成されます。
この複雑な凹凸構造が入射光を多方向に散乱させるため、光沢値は極めて低い値となります。MAKO-4S・MAKO-9Sの計測値はいずれも2.6 GU(レンジ100)と、3分類中で最も低い反射率を示しました。
| MAKO-4S | 2.6 GU | |
| MAKO-9S | 2.6 GU |
🟢 グリッドブラスト(鋼球)
鋼製グリッドによる強靭な表面改質
鋼球(スチールグリット)を高速投射するブラスト方法。金属素材の投射材が表面に強い衝撃を与え、ピーニング効果(圧縮残留応力付与)も期待できます。表面形状はやや不規則な凹凸となります。
MAKO-FWGの計測値はレンジ100で58.4 GU(レンジ1000換算で56 GU)。光沢の均一性が求められる用途ではガラスビーズが優位ですが、機械的強度改善を同時に求める場合にグリッドが選択されます。
| MAKO-FWG | 58.4 GU |
以下の表は、#400バフ研磨を下地とした各ブラスト処理サンプルの60°反射率実測値です。参照値としてバフ研磨のみの光沢値も掲載します。
※ GU = Gloss Unit(光沢単位)。計測不能はレンジオーバーまたはレンジ以下のため読取不可を示します。
光沢値(Gloss Unit:GU)は、光沢計による60°入射での反射光強度を、基準黒色ガラス(GU=100)との比較で数値化したものです。値が高いほど正反射成分が大きく(鏡面に近い)、値が低いほど拡散反射が支配的(マットな表面)であることを示します。
ステンレス鋼の場合、#400バフ研磨仕上げの光沢値は546 GUという極めて高い値を示します。これはほぼ鏡面に近い状態であり、入射光のほとんどが正反射されることを意味します。
ブラスト処理による反射特性制御は、精密産業機器において装置性能に直結する重要な設計要素です。
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🔆 露光装置 半導体・液晶製造用の露光装置では、内壁・チャンバー部品からの迷光(ゴースト光・フレア)が露光精度を低下させます。内壁面に極低反射処理を施すことで、意図しない反射光を拡散させ、露光均一性と解像度を向上させます。光沢値2〜5 GU程度の極低反射仕上げが求められます。 |
🧪 真空装置・CVD炉 真空チャンバー内壁の反射特性は熱輻射・光散乱の分布に影響します。均一な低反射表面はチャンバー内の温度分布均一化や、プロセスガスの活性化制御に寄与します。真空シール部品や熱シールド部材においても、反射率管理によるプロセス安定化が求められます。 |
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🔭 光学機器・レーザー装置 レーザー加工機や光学測定装置の内部構造材では、レーザー光の意図しない反射が装置損傷や測定誤差の原因となります。高光沢部品の配置を避け、ブラスト処理による低反射化で安全性と精度を確保します。 |
🏭 工業用カメラ・検査装置 外観検査装置や工業用カメラの筐体・光学系支持部品では、内面反射による像のコントラスト低下が問題となります。ブラスト処理による低反射化で、S/N比の改善と検査精度向上が実現できます。 |
まず装置仕様・設計基準から、表面に求める60°光沢値の目標値を設定します。光沢計(グロスメーター)での実測値で仕様を規定することで、サプライヤーとの明確なコミュニケーションが可能になります。
反射率以外の要件(ピーニング効果・耐食性・コスト・後工程との整合性)によって、同等光沢値内での最適手法を絞り込みます。グリッドブラストは機械的強度改善の副次効果があり、ガラスビーズは均一性・再現性に優れています。
本ページで解説したように、ステンレス鋼へのブラスト処理は、単なる表面仕上げにとどまらず、露光装置・真空装置の光学的・物理的性能を左右する重要な表面処理技術です。
実測データが示す通り、ガラスビーズブラストでは処理条件の組み合わせにより47.7〜141 GUの幅広い光沢域に対応でき、グリッドブラストでは58.4 GU、サンドブラストでは2.6 GUという極低光沢域がそれぞれ達成されます。
下地処理(本データでは#400バフ研磨)の品質を統一した上でブラスト処理を行うことで、再現性の高い反射特性管理が可能となります。用途ごとの光沢値要求に対して、本データを設計・仕様策定の参考値としてご活用ください。