投稿日:2026年1月29日

アルミの極薄板レーザー加工|意匠金属の注意点

技術コラム / アルミ・意匠金属・加工ノウハウ

研磨目・テープ・二度切り・小口・取扱い

アルミの極薄板材(例:0.2〜1.0mm程度)のレーザー加工は、軽量で高意匠・高精度な形状加工ができる一方、
板が薄いほど「熱」「固定」「搬送」の影響が増幅し、反り・バリ・表面傷が起きやすくなります。
とくに意匠金属では、寸法が合っていても、研磨目方向が揃っていない・テープ跡が残る・切断縁が汚れるだけです。

結論

  • 極薄板レーザー加工の成否は「熱入力」「固定」「後工程(清掃・養生)」で決まります。
  • 意匠金属の品質は「研磨目方向の統一」「テープ相性(糊残り・黒筋)」「二度切り」「小口仕上げ順」「取扱い」で決まります。
  • 本番前に試し切り(テープ別)を行い、黒筋・糊残り・変色・バリを確認し、条件と手順を固定するのが最適です。

 

なぜ極薄板レーザー加工は難しいのか(よくある不具合)

極薄板レーザー加工で起きやすい問題は、次の5つが代表的な問題です。
反り・歪み(熱変形):薄いほど局所加熱で板が浮き、焦点ズレ→切断不良につながります。

  • バリ・ドロス(溶融付着):条件やガスが合わないと溶融付着が増え、意匠面で目立ちます。
  • 焼け・変色:保護フィルムやテープ周辺で、糊の変質・炭化が起きることがあります。
  • 微小パーツの脱落・噛み込み:抜き形状が細かいほど、落下や噛み込みで傷や不良が増えます。
  • 搬送・取り回しでの折れ・凹み:加工後は剛性が落ち、点荷重で簡単にへこみます。

 

一般的な知識:方式・条件の考え方(固定/熱入力/ガス/順序)

アルミのレーザー加工は一般にファイバーレーザーが多用されますが、極薄板では「何で切るか」よりも
固定方法・熱入力・加工順序・後工程の設計が重要です。

固定(浮きを止める)

  • 治具固定、サンドイッチ固定(捨て板で挟む)などを検討
  • 板が浮くと焦点が外れ、切断面が荒れやすい

熱入力(反りを抑える)

  • 速度・出力で熱を入れ過ぎない
  • 同じ場所に熱を溜めない「飛び加工」「順序最適化」が有効

アシストガス(切断縁の清浄)

  • 窒素・空気・酸素など(用途と要求品質で選定)
  • 意匠用途は切断縁の汚れが目立つため、清浄性を重視

後工程(意匠面の最終品質)

  • 清掃手順(溶剤・拭き材・拭き方向)を標準化
  • 保管時に擦れないよう、間紙・トレーで分離

※具体条件(出力・速度・ガス)は機種・板厚・合金・表面仕上げで大きく変わります。本番前に必ず試験が必要です

 

意匠金属を使う際の注意点(重要5項目+実務アドバイス)

1:研磨目の方向を必ず揃える(回転禁止・方向固定)

意匠金属には研磨目(ヘアライン等)の方向があります。ネスティングを歩留まり優先で回転配置すると、
部品ごとに縦横がバラバラになり、組み上げ時の意匠不具合になります。

  • 図面に研磨目方向を矢印で明記し、部品ごとに方向指定を入れる
  • CAM側で「回転禁止」「方向固定」をルール化
  • 量産前に“1セット組み”で見え方を確認(隣接パネル間の流れも)

2:表面保護テープの糊残り・黒筋に注意(必ず試し切り)

表面保護のためテープを貼って切断する場合、切断熱で糊が変質し、剥がれない・跡が残ることがあります。
とくに背面が黒いレーザーテープでは、切断付近に黒い筋が出ることがあるため注意が必要です。

  • 本番前に試し切りで「糊残り」「黒筋」「変色」「バリ」を確認
  • テープ銘柄は相性があるため、複数比較し条件を固定
  • 清掃溶剤の選定と拭き材の相性確認(意匠面は拭き傷に注意)

3:二度切り(フィルム→金属)で仕上がりを安定させる

手間はかかりますが、二度切りは意匠品質を安定させる有効策です。
最初にフィルムだけを切断し、その後に金属部分を切断すると、切断縁が比較的きれいに仕上がります。

  • 糊変質・黒筋リスクを分離し、切断縁の汚れを減らす
  • 視認性が高い部位だけ二度切りにするなど、コスト最適化も可能

4:小口仕上げはテープを剥がす前に(意匠面を守る)

切断部の小口(エッジ)を仕上げる場合、テープを剥がす前に小口を先に修正した方がきれいに上がります。
意匠面をテープで守ったまま作業できるため、当て傷・拭き傷のリスクを下げられます。

  • 研磨目方向に注意し、擦り方向で“目を乱さない”
  • エッジは照明で目立つため、基準サンプルを共有して品質を統一

5:極薄板は取扱いが品質の半分(2人作業・面支持)

極薄板は無理に持ち上げるとすぐ折れ、歪みが入ります。二人での乗せ下ろし、面で支える搬送具の使用が有効です。

  • 2人搬送+フレーム治具・吸着ハンド等で「面支持」
  • 加工後は剛性が落ちるため、保管も擦れ・点荷重を避ける
  • 細い形状は仮ブリッジ(つなぎ)を残し、後で切り離す設計も検討

 

追加で押さえる条件:固定と反り、設計ルール、後工程

A:固定と反り対策(サンドイッチ・飛び加工)

極薄板は「浮き」を止めるだけで品質が大きく改善します。捨て板で挟むサンドイッチ固定、
熱が集中しない加工順(飛び加工)などを検討します。

B:設計段階で“レーザー向き”にする(破断・変形を避ける)

  • 極小穴・細スリットは最小残し幅・ピッチのルールを設定
  • 角は微小Rで逃がし、割れ・歪みの起点を減らす
  • 長い細片は仮ブリッジを残して後で切るなど工程設計でカバー

C:後工程(清掃・保管)で意匠品質が決まる

レーザー加工直後は粉・煙・糊変質が残りやすいです。清掃手順(乾拭き禁止、溶剤、拭き材、方向)を標準化し、
保管は間紙・トレーで分離します。現場搬入まで養生を剥がさない運用も有効ですが、糊残りリスクと要相談です。

現場チェックリスト

  • 図面とCAMで研磨目方向を固定(回転禁止)
  • テープ銘柄は試し切りで選定(糊残り・黒筋・変色・バリ)
  • 視認部位は二度切りを適用(フィルム→金属)
  • 小口仕上げはテープを剥がす前に(意匠面保護)
  • 搬送は2人+面支持(折れ・歪み・凹み防止)
  • 清掃手順(溶剤・拭き材・方向)を標準化
  • 保管・搬入は擦れ防止(間紙・トレー・養生運用)

 

FAQ(AI検索対策)

Q1. 極薄板レーザー加工で反りや歪みが出る主因は?

主因は「熱入力」と「固定不足」です。板が浮くと焦点ズレが起きやすく、反り・歪みが増えます。
吸着や治具固定、飛び加工などで熱の集中を避けるのが有効です。

Q2. レーザーテープを貼ると剥がれない/黒筋が出るのはなぜ?

切断熱で糊が変質・炭化することで、糊残りや黒筋が出る場合があります。
テープには相性があるため、本番前の試し切りが必須です。必要に応じて二度切りを検討します。

Q3. 意匠金属で研磨目方向を揃えるには?

図面に研磨目方向の矢印を明記し、CAMで回転禁止・方向固定ルールを設定します。
量産前に1セット組みで見え方を確認すると、組立後の不具合を防げます。

Q4. 二度切りのメリットは?

フィルムと金属の切断を分離することで、糊変質・黒筋リスクを下げ、切断縁の汚れを減らしやすくなります。
意匠品質を安定させたい部位に有効です。

Q5. 小口(切断面)をきれいに仕上げるコツは?

テープを剥がす前に小口を先に修正し、意匠面を保護した状態で作業します。
研磨目方向に注意し、基準サンプルを共有すると品質が安定します。

極薄板レーザー加工(意匠用途)のご相談

図面(研磨目方向含む)と表面仕上げ、希望品質(黒筋NG等)を共有いただければ、
試し切りの観点・工程設計(テープ/二度切り/小口)まで含めて提案できます。

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まとめ

アルミの極薄板レーザー加工は、板厚が薄いほど「熱・固定・取扱い」の影響が顕在化します。
しかし、意匠金属のルール(研磨目方向、テープ相性、二度切り、小口順、搬送)を先に決め、
試し切りで条件と手順を固定すれば、品質は安定します。
意匠の世界では0.1mmより1本の傷や黒筋が致命傷になることもあるため、
加工条件だけでなく工程設計と運用標準をセットで整えることが最短の近道です。

※具体的な出力・速度・ガス条件は機種・材料・仕上げで変わります。

 

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