高耐食ステンレス鋼

高耐食ステンレス鋼(こうたいしょくステンレスこう)とは、特にサビに強く、過酷な環境下でも長期間性能を保つように設計されたステンレス鋼のことです。
一般的なステンレス鋼もサビにくい金属ですが、高耐食ステンレス鋼はさらに腐食(さびや劣化)に対する耐性が強化されたタイプです。

なぜサビに強いのか?

高耐食ステンレス鋼には、クロム(Cr)やニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)などの元素が多く含まれており、金属表面に「不動態皮膜」と呼ばれる保護膜を作ることで、酸や塩分などの腐食要因から内部を守っています。
特にモリブデンを多く含むタイプは、海水や薬品などにさらされる環境でも優れた耐食性を発揮します。

高耐食ステンレス鋼の主な特徴

  • 非常に高い耐食性:海水、酸、塩化物などに対してもサビにくい
  • 高温環境にも強い:熱に強く、変形しにくい
  • 長寿命・メンテナンス性の良さ:劣化しにくく、手入れの頻度を抑えられる
  • 見た目の美しさが長持ち:建築や意匠製品にも適している

主な使用用途

高耐食ステンレス鋼は、以下のような厳しい環境にさらされる分野で広く使用されています。

  • 化学プラントや製薬機器:腐食性の高い薬品を扱う設備に
  • 海洋構造物・造船:潮風や海水に長期間さらされる場所に最適
  • 食品加工機器:清潔さが求められ、洗浄頻度の高い設備に
  • 建築外装材:雨風にさらされる外壁や手すりなどに
  • 上下水道設備:湿気や水分が常にある環境下で活躍

高耐食ステンレス鋼の代表的な型番

SUS316(JIS規格)

  • 特徴:モリブデン(Mo)を含有しており、SUS304よりも耐孔食性(点状に腐食する現象)や耐塩害性が高い
  • 用途:海水環境、化学プラント、医療機器、食品機械など。

SUS316L

  • 特徴:SUS316の低炭素タイプ(L=Low carbon)。溶接後の耐食性が高く、応力腐食割れにも強い
  • 用途:医薬・食品設備、配管、熱交換器など。

SUS317/SUS317L

  • 特徴:SUS316よりもさらにモリブデン含有量が多く、極めて高い耐食性を持つ。
  • 用途:非常に腐食性の高い化学薬品を扱う環境など。

904L(UNS N08904)

  • 特徴:高モリブデン・高ニッケル型の超高耐食ステンレス鋼。硫酸などの強酸にも耐える
  • 用途:化学装置、排ガス脱硫装置、海水淡水化装置など。

高耐食ステンレス鋼は、「サビにくい」というステンレスの特長をさらに強化した素材で、長く、安心して使える金属材料として多くの分野で活用されています。
過酷な環境でもその美しさと機能を保ち、ライフサイクルコストの削減にもつながるため、今後も需要が高まる素材のひとつです。

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