意匠研磨は「模様づくり」ではなく、光の反射を設計する加工です。
同じ研磨条件でも、素材が平面か曲面か(またはエッジを持つか)によって、研磨目の見え方は変化します。
本ページでは、バイブレーション研磨を例に、平板・フラットバー・角パイプ・丸パイプで起きる視覚差を解説します。
【目次】
1. バイブレーション研磨とは
2. 形状別:研磨目の見え方の違い
3. なぜ違って見えるのか(光学的背景)
4. 設計・仕様検討で押さえるポイント
5. まとめ
バイブレーション研磨は、回転運動や偏心運動などの相対運動を利用し、円弧状の研磨目が重なり合うことで、柔らかな陰影と上品な輝きを生む意匠研磨です。
・円弧状の研磨目が重なり、直線ヘアラインより「柔らかい印象」になります。
・ランダム性があり、光の乱反射で「上質なきらめき」をつくりやすいです。
・指紋・微細傷が相対的に目立ちにくい(仕様・環境による)です。
・建築内装、什器、意匠パネルなどで採用されやすいです。

POINT:バイブレーション研磨は「面」に対して模様を付けますが、その面が平面か曲面かで、反射の仕方が変わり、結果として見え方が変わります。
平板は光学的に最も安定した形状です。面の法線(面の向き)が一定のため、
入射光と反射光の関係が比較的一様になり、研磨目も「均一」に見えやすくなります。
・視点が変わっても、表情の変化が比較的少ない
・広い面積で「落ち着き」「上質感」「面の広がり」を出しやすい
・壁面パネル・カウンター・扉面などに適性が高い
フラットバーや角パイプは、各面が平面で構成されるため、基本は平板に近い見え方になります。
ただし、エッジ(角)があることで、面ごとに反射方向が変わり、立体感が強調されます。
・面ごとに輝きが変わり、シャープな陰影が生まれやすい
・角部で「明暗の切り替え」が起きやすく、造形が際立つ
・フレーム・枠材・意匠什器などで“輪郭の強さ”を出しやすい
丸パイプは曲面であるため、同じバイブレーション研磨でも、見え方が変化しやすくなります。
曲率によって面の向きが連続的に変わるため、反射光が集中する帯(ハイライト)が現れやすく、
「研磨目が流れる」「光が動く」ように見えることがあります。
・曲面のため、入射角・反射角が連続的に変化する
・強い反射が一点(帯)に集まりやすく、光帯が現れやすい
・視点移動で輝きが移動し、動的な表情をつくる
現象の言い換え:
平板=「均質」/角材=「輪郭が立つ」/丸材=「光が流れる」
| 形状 | 見え方の傾向 | 主な理由(光学) |
|---|---|---|
| 平板 | 均一・落ち着き・面の広がり | 面の法線が一定で、反射条件が安定 |
| フラットバー/角パイプ | 面ごとに明暗が変わり立体感 | エッジで反射方向が切り替わる |
| 丸パイプ | 光帯が出やすく、流動的・動的 | 曲率で反射角が連続変化し、ハイライトが集中 |
平面は面の向きが一定なので、同じ照明条件・同じ視線条件では見え方が揃います。
一方、曲面は面の向きが連続的に変化するため、同じ照明下でも場所ごとに反射が変わり、
視覚的なムラ(=表情)が生まれます。

人の目は、微細な研磨目そのものよりも「強い反射」に強く引っ張られます。
丸パイプでは反射が帯状に集中しやすく、研磨目が“違って見える”主因になります。
曲面は、照明と視点の関係により自然なグラデーションを形成します。
そのグラデーションが研磨目の密度感や方向感を強調・弱化し、印象差をつくります。
Point:違いの本質は「加工差」ではなく、同じ加工が“形状によって別の見え方に変換される”点にあります。
意匠研磨は、材料と加工だけで完結せず、最終的には「照明」「距離」「視点」「周辺素材」とセットで検討します。
形状差を前提に、以下の観点で仕様検討を行うと、狙った表情に近づけやすくなります。
・形状:平面/角材(エッジあり)/曲面(丸パイプ)
・照明:自然光、スポット、間接、ライン照明(光帯の出方が変わる)
・観察距離:近接(テクスチャが見える)/遠景
・配置:連続部材か単体か
・用途:壁面・天板・手摺り・枠・什器(触れる頻度や傷の許容が違う)

