
建築や機械装置の分野において、金属パネルの取り付けは、構造物の信頼性・美観・施工効率に直結します。
中でも「スタッドボルト(スタッド溶接)」は、表面美観を損なうことなく、強固で確実な固定を実現できる取付方法として注目されています。
そこで今回は、SUS304鋼板に対してCDスタッド(キャパシタ放電スタッド)溶接を実施し、そのせん断・引張強度を評価した試験データをご紹介するとともに、スタッドボルトの構造的な有用性や実際の用途、他工法との比較までを詳しく解説します。
スタッドボルトとは、片側にねじが切られた金属棒で、反対側が溶接されることで基材に固定されるものです。スタッド溶接によって母材と一体化するため、隠し固定や外観を損なわない設計に最適です。
用途は建築、インテリア金物、産業機械、配管支持、電気パネル、看板構造体など多岐にわたり、特に装飾パネルや意匠金属板の固定においてその効果を発揮します。

CDスタッド溶接(Capacitor Discharge Stud Welding)は、非常に短時間(数ミリ秒)で放電溶接を行う工法で、
母材へのダメージが少なく、薄板や表面仕上げを傷つけたくない用途に最適です。
<主な特徴>
・裏焼けが少ない:裏面に熱の影響がほぼ出ないため、意匠材に有利。
・薄板でも高強度:1.0mmのSUS304でも確実な接合が可能。
・高速施工:1秒以下で溶接完了。
・美観維持:表面側から施工しないため、表に溶接跡が出にくい。(※板厚によります)

<試験条件>
母材:SUS304鋼板_1.0t(1.0mm厚)
スタッドボルト:SUS S6×20(直径6mm、長さ20mm)
<溶接方法>
CDスタッド溶接(電圧:95VDC)
<試験種別>
せん断試験:スタッドを横方向に切断する力に対する強度評価
引張試験:スタッドを引き抜く力に対する強度評価


<評価ポイント>
この結果から明確なのは、すべての試験体がスタッドではなく母材側で破断している点です。つまり、スタッド溶接部は母材よりも強いということを意味します。
これはCDスタッド溶接の信頼性を裏付けるデータであり、薄板であってもスタッド部が構造的に非常に強固であることを示しています。
本試験でも示されたように、溶接部の強度は母材を上回るケースも多く、ボルトが抜けるより先に母材が破断するほどの高信頼性が得られます。
表からの穴あけやビス固定と異なり、意匠面に傷を付けず裏側から固定できるため、外観にこだわる高級内装材や建築意匠部材に最適です。
ステンレス・鉄・アルミなど様々な材質で対応でき、サイズバリエーションも豊富。異種金属溶接や腐食対策にも応用できます。
一発溶接で済むため、取り付け作業が効率的でスピーディー。施工の標準化にも向いています。


CDスタッド溶接は、強度・美観・施工性いずれも高い水準でバランスしており、特に建築やインテリアの意匠金属固定において他の追随を許しません。
・意匠ステンレスパネルの固定(壁面、天井、柱装飾)
・鏡面パネルやヘアライン材の見せ場施工
・エントランスや駅構内、ショッピングモールなど公共空間の高級仕上げ
・機械カバーの脱着構造
・制御盤の補強金具
・医療機器、食品機械への構造体組み込み
・金属アートパネルの裏面固定
・屋外オブジェのステンレス支持構造
ポイント①:母材の材質と厚みを確認する(薄板にはCDスタッドが最適)
ポイント②:必要な引張・せん断強度に応じてスタッドサイズを選定
ポイント③:施工業者の熟練度(スタッド溶接には専用設備と適切な前処理が必要)
ポイント④:試験データに基づいた信頼性設計(本記事のような実測値活用)
スタッドボルトは、目立たない部品でありながら、その接合信頼性と施工効率、そして美観保持性能は、金属パネル施工において非常に重要な存在です。
特に今回の試験結果からも明らかなように、適切な設計と施工により、母材破断を上回る強度を実現可能です。これこそが、スタッドボルトが建築から産業用途まで幅広く採用される理由です。
意匠性と機能性を両立する金属パネルの固定には、ぜひスタッドボルトとCDスタッド溶接をご活用ください。